農村文化ゼミナールの歩み

平成元年(1989年) 8月5日(土)
   高畠町中央公民館・浜田広介記念館
第2回 置賜農村文化ゼミナール
     テーマ「米の文化史」
                   主催  財団法人農村文化研究所 
                   共催  高畠町・高畠町教育委員会・高畠町農協

基調講演 「日本人と稲作文化」
佐野 賢治氏 (筑波大学助教授)
シンポジウム 「人問にとって米とは」
コーディネーター 竹田又右工門氏 (川西町埋蔵文化資料展示館)
パネラー 武田  正氏 (民俗学、作家)
船山  達郎氏 (川西町農協組合長、エッセイスト)
中川  信行氏 (高畠町農協理事、有機農業研究会)
菊池  良一氏 (上和田有機米生産組合長)
市川  憲司氏 (前高畠町農協青年部委員長)
山中  和子氏 (大田健康を守る会代表)
助言者 佐々木 洋治氏 (山形県教育委員会文化課主査)
講   話 「置賜の風土とひろすけ文学」
星   寿男氏 (高畠町文化課長)


.ゆたかな白然環境に恵まれた置賜の地域風土は、また常民のなりわいの中カ'ら生まれた民俗文化の宝庫でもあります。
私たちの先輩が、大地に汗をしたたらせ、長い歳月をかけてつくり上げてきた地域の、生産基盤や、生活技術(わざ)や、それらを生きる歓びに高めた文化的な息づかいは、先の見えない危機の時代に、一つのたしかな指針を与えてくれます。
昨年、川西町で開かれた第1回夏のゼミナールでは、「祭」をテーマに、生産と結びついた農耕儀礼の意味と楽しさを再現し、参加者の深い共感をさそいました。その折に、置賜の各地が持ち廻りで、固有のテーマをかかげて開くことを申し合わせました。
今年、2回目は、浜田広介記念館のオープンや、押出遺跡の発掘もあり、ぜひ高畠町でという希望を受けて準備を進めてきたところです。
主テーマを、「米の文化史」に置いた意味は、私たちの背骨を成す稲作農耕文化が時代の変遷の中でしだいに追いつめられ、やがて崩壊するのではないかとの不安がつのるこの頃ですが、そうした状況を切り拓いて、米のもつゆたかな可能性、文化性を掘り起こしたいと考えたからです。
ますます雑食民族化する日本人が、主食としての米を失っていいものだろうか。あるいは、低コスト、合理化、自由化の先行きに美田を守る展望が見えるだろうか。さらには、若者たちの土ばなれが、イエやムラ社会の存続すら危うくしてゆく流れをどう乗り越えて、新しい波をわき立たせことができるのか。
そうしたさし迫ったl課題に、しなやかに挑戦し、希望へと転換していくためには、米の主食としての重要さや、経済性や、環境を保全する機能に目を開くことはもちろんですが、さらに根底の所に、稲作の内包するゆたかな文化的意味を探り、生きがいをこめて取り組むことが必要だと思えます。
このたびの催しは、そうしたあらたな視点から基層文化のルーツをたどり、人々のいのちの糧をつくり、そして食べることの歓びを回復し、共にかみしめる場にしたいと願っています。ぜひご参加下さい。

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