祝、文化勲章受賞!!川田順造先生の文化勲章の受章が決まりました!

川田順造先生(87)が文化勲章の受章が決まりました!

心よりお祝い申し上げます。

撮影abe takahiro

 

 

 

 

 

”世界の川田”こと川田順造先生と農村文化研究所は非常に深い関わり合いがあります。

川田先生は、農村文化研究所の名誉顧問として長年当館の運営や方針などの助言をいただいていました。

また、毎年、米沢に来訪し、米沢を満喫しておりました。農村文化ゼミナールでも何度も講演をいただいています。

 

さらに、2015年、戦争資料館開館当初も、館の顔になる看板を揮毫(書く)いただきました。

本当におめでとうございます!

 

(余話)

2017年の夏、Aは、川田との会話の中で激励を受ける。Aは戦争資料館の立ち上げに携わったが、専門分野の違いから文化人類学者の川田のことは少ししか知らなかった。

日本文化、こと、山形にしか興味のないAは川田との酒宴の席で議論になった。

 

川田は、戦中を体験している、現在では数少ない人類学者のひとりである。その経験がさまざまな思考の根底にある事を語っていた。

「「戦争資料館」と書くときに戦争の”戦”の字をどう書くか、また、右から書くか、左から書くか、これは生きた時代によって反映される。

僕は、戦中を生きてきたから、当然左からなんです。佐野さんは右からと言うけれども、左からなんです。」(佐野さんとは当館所長、佐野賢治)

どっちから書いても同じだろうと思う方も多いが、このようなこだわりが川田の研究にも存分に発揮される。

『日本を問い直す 人類学者の視座』(2010)においても、”8月15日のフィールドワーク”など、こだわりを感じる。

そして、継続して実践することが学問の本質である事を60歳も離れた若造に諭すように話すのである。

決して指導ではなく、対等に話すのである。

 

「君は『聲』という僕の本を読んだことがありますか。ないのですか。それは良くない。帰ったら、すぐに送ります。

君の分野とは違うけれども、間違いなく役に立つ。戦争は記録しなければならないが、記録方法が難しいのです。この資料館はいいです。

ぜひ僕の本を読んで下さい。そして地味な研究ですが、大事なことです。」そう言って、続けてぼそぼそと独り言が続いた「20、30年前の本だから家にあっただろうか。」

『聲』は川田の代表作で無文字社会をフィールドワークした記録でもある。

酒宴ではあったものの、形ない現象をどう捉えるかという議論の中での一場面であった。学者の酒宴とはそういうものなのである。

 

1ヶ月後、『お世話になった御礼の気持ちを籠めて 川田順造』と一筆箋とともに『聲』が送られてきた。ちくま学芸文庫の文庫版で、1998年の初版本であった。

開き癖がなく本としては未使用状態。約20年前の物としては上等であった。川田家のどこかに収まっていたのだろう。

忙しい中でも若造との約束を守り、『聲』を届けた。川田にとってはちょっとした事かも知れないが、

このような出来事が学芸員Aには深く刻まれている。川田の『聲』は確かに民俗学徒に届いた。

 

平凡社様 これを機に、『口頭伝承論 上 下』の再販をお願いします。

川田先生より提供

(写真川田先生より提供)