【山形新聞】戦地の夫 恋い慕う340点

米沢市の農村文化研究所は、飯豊町出身の女性が戦時中、海外に出征している夫に宛てた軍事郵便約340点を発見した。戦地に送られた手紙類がこれだけまとまって残っているのは珍しいという。戦時下の暮らしぶりを伝える資料として、一部を研究所で公開している。

見つかったのは、斎藤きよさん(故人)が、陸軍軍医として旧満州北部や東南アジアへ従軍中の夫、良純さん(同)に送った絵はがきや便箋など。1939年9月~43年12月に書かれており、日本に持ち帰った良純さんが2つの冊子にとじて保管していた。

良純さんの死後、遺族は冊子を米沢市内の古物商へ売却。2015年7月に同研究所が購入した。

「昨晩もあなたの夢のみ見て居(お)りました」。きよ子さんの手紙には、夫を恋い慕う言葉が並ぶ。当時小学生だった長女俊子さん(故人)がクラスの副級長に選ばれ大喜びしていたことなど、子供の成長をつづったものも多い。

日米開戦前の41年7月に書かれた手紙には、複数の近隣住民が召集を受けたという記述も。「スパイの恐れある為(ため)かすべて秘密とされ近親者の見送りも禁じられて居ります」と、日常が戦争一色になっていく様子が生々しく書かれている。
研究所の阿部宇洋学芸員(31)は「戦地への軍事郵便は持ち主が復員前に処分するなどして現存数が非常に少ない。戦時下の民衆生活を知る上で、貴重な材料になるだろう」と話した。

2016-12-31yamasin